「否定しない」が大原則
『「否定しない」が大原則』
認知症の症状が進行している方には、普段の私たちからは 理解できないような言動、行動が見られるようになります 。
しかし、「何を言っても無駄」と無視してしまうのは、可 哀想ですよね。
今回は認知症の家族への適切な声かけ、そして言葉以外で 有効とされているコミュニケーション方法などについて考 えてみました。
『認知症の方本人が一番傷つき、不安である』
認知症で最も発症する確率が高く、記憶障害を起こすアル ツハイマー型認知症は、脳の部位でも記憶を司る海馬と側 頭葉が、老化によって委縮することが原因で始まります。
記憶する能力が衰えると、過去に記憶したことも思い出せ なくなります。
まず、人の名前を思い出せなかったり、自分が普段使うメ ガネや杖をしまった場所が思い出せなかったりといった中 核症状が見られるようになります。
そして、次第に一緒に暮らしている家族の顔や名前、さら に今日の日付や直前に食事をとったことも思い出せなくな ってしまいます。
子どもと孫の名前を言い間違えるのも、よくありがちな認 知症の兆候です。
症状が進むと自分の年齢や名前さえ忘れてしまったり、外 出した際に自宅の場所を忘れてしまい帰宅できなくなるよ うなケースもあります。
高齢者の徘徊が社会問題の一つになっていますが、その多 くは自宅の場所を思い出せなくなったために起きているこ となのです。
こういった症状やトラブルが発生した場合、家族は大きな ショックを受けますが、一番傷ついているのは高齢者本人 です。
今までできていたことができなくなる、思い出せなくなる 。
そのことが受け入れられず、急に塞ぎ込んだり、逆に周囲 に八つ当たりと言わんばかりに怒りっぽくなるなどの変化 が見られるようになります。
そのため、認知症の方は、とにかく心理的に不安であると いうことを、コミュニケーションを取る上で家族は心得て おかなければなりません。
『話しかける前に、目線を合わせて、耳の近くで話すよう に』
認知症の症状が見られる家族に対してどのようなコミュニ ケーションが適切なのか。
具体的な声かけの前に、意外と見落としがちな高齢者と接 するときの注意点を確認します。
「大きな声で、耳元で、ゆっくり話す」
高齢者の多くは、老化によって耳が遠くなっています。
このため普通に話しかけても声が届かず無視されてしまう こともあります。
高齢者に対する理解が低いと、「もう言葉すら理解できな くなっている」と家族は勘違いしてしまいますが、これは 大きな誤解です。
介護施設で働く職員を見ればよくわかると思いますが、本 人の耳元で、大きな声でゆっくりと語りかけることは高齢 者と接する上での基本となります。
「目線の高さを合わせる」
病気のため一日中ベッドで過ごしたり、車いすを利用した りしている高齢者は多くいます。
そんな高齢者に話しかけるときは、体勢を下げて本人と目 線の高さを合わせることも大事です。
立ったままで上から話しかけられても、どこか見下されて いるような印象を与えるばかりか、不安を与えてしまうこ とも。
例えばガソリンスタンドでも、失礼のないようドライバー の顔の位置まで膝を折って接客するように指導されていま す。
目線の高さを合わせることは、気持ちよくコミュニケーシ ョンを取るために重要なことなのです。
『否定しない、叱らないが大原則!』
認知症が進み、記憶力が低下しても、羞恥心やプライドは 変わらないと言われています。
その点をよく理解した上で本人に話しかける必要がありま す。本人の発言に対して否定しない、叱らないというのが 大原則です。
例えば、認知症の方がすでに成人になった息子に対して、 「今日のテストの点数はどうだった?」と聞いた場合、「 算数はよくできたけど、国語がイマイチだった」と昔に戻 ったつもりで答えてみましょう。
否定して本人が間違いを認知できるうちはいいですが、同 じことを何度も繰り返し聞くなど改善が見られない状態で 誤りを正しても効果はありません。
こういった状態で「小学校なんて何十年も前に卒業したよ 」とか「孫と勘違いしているんじゃない?」と否定しても 本人に理解できるはずがなく、ますます困惑してしまいま す。
また、本人がとった行動に対しても、否定せずに受け入れ る態度が必要です。
例えば、洋服を便器の中に詰め込もうとしていた高齢者が いたとします。
こういった行為を発見したとき、家族は「汚いじゃないの ! 何をやっているの?」と言いたくなる気持ちを抑えて、「 あら、洋服を洗濯しようとしてくれたのね、ありがとう」 と反応することが重要です。
これによって本人は疎外感を感じることなく、家族の一員 であることに安心感を覚えてくれるのです。
ただし、安全上問題がある場合、むやみに褒めたり肯定し たりというのは危険です。
例えばコンロの火を点けたまま忘れてしまう、横断歩道の ない道路を渡ろうとするといった行動は大変危険なもので す。
こういう行動が見られる場合は別途対策を考える必要があ ります。
『アイコンタクトやスキンシップが持つ可能性』
認知症の症状の特徴として、比較的新しい記憶から失われ ていく傾向があります。
逆に言い換えれば、幼少期の記憶は失われていない可能性 があります。
この特徴を活かした「回想法」という手法が認知症患者に 有効であると言われています。
具体的には、子どものころによく遊んだもの、歌、写真な どを切り口に昔の記憶を思い出してもらい、脳の活性化と ともに情操の安定を試みる狙いがあります。
話が盛り上がってくれば、家族間でのコミュニケーション の形成にも役立ちます。
また、言葉だけに頼らない非言語コミュニケーションで認 知症の緩和を試みる取り組みもあります。
1963年にアメリカ人ソーシャルワーカーのナオミ・フ ェイル氏に考案された「バリデーション療法」や、後にフ ランス人のイヴ・ジネスト氏らによって提唱された「ユマ ニチュード」といった認知症ケアの取り組みでは、言葉で のコミュニケーション以外で、見つめる(視線を合わせる )、触れる(ボディタッチ)といった共通項がいくつか見 られます。
集団の中で“自分”という存在を再認識してもらい心の安 定を導くのです。
言葉以外にも、認知症の緩和につながるプロセスはまだま だ存在するのかもしれません。
『認知症への正しい理解が、正しいコミュニケーションを 導く』
「認知症の人は、常に不安を抱えて暮らしている」という ことを念頭に置けば、普段どのように認知症の家族と接す るべきか答えが出てくると思います。
認知症改善のためにさまざまな療法が確立されつつありま すが、療法で改善につながるケースは不確かなもので、普 段の何気ないコミュニケーションから心の安定を保ってく れることが一番の緩和策になります。
今回ご紹介したようなコミュニケーションの手法を取り入 れることで、認知症高齢者との関わり方、そして共に歩む べき道が少しでも拓けてくるはずです。
認知症の症状が進行している方には、普段の私たちからは
しかし、「何を言っても無駄」と無視してしまうのは、可
今回は認知症の家族への適切な声かけ、そして言葉以外で
『認知症の方本人が一番傷つき、不安である』
認知症で最も発症する確率が高く、記憶障害を起こすアル
記憶する能力が衰えると、過去に記憶したことも思い出せ
まず、人の名前を思い出せなかったり、自分が普段使うメ
そして、次第に一緒に暮らしている家族の顔や名前、さら
子どもと孫の名前を言い間違えるのも、よくありがちな認
症状が進むと自分の年齢や名前さえ忘れてしまったり、外
高齢者の徘徊が社会問題の一つになっていますが、その多
こういった症状やトラブルが発生した場合、家族は大きな
今までできていたことができなくなる、思い出せなくなる
そのことが受け入れられず、急に塞ぎ込んだり、逆に周囲
そのため、認知症の方は、とにかく心理的に不安であると
『話しかける前に、目線を合わせて、耳の近くで話すよう
認知症の症状が見られる家族に対してどのようなコミュニ
具体的な声かけの前に、意外と見落としがちな高齢者と接
「大きな声で、耳元で、ゆっくり話す」
高齢者の多くは、老化によって耳が遠くなっています。
このため普通に話しかけても声が届かず無視されてしまう
高齢者に対する理解が低いと、「もう言葉すら理解できな
介護施設で働く職員を見ればよくわかると思いますが、本
「目線の高さを合わせる」
病気のため一日中ベッドで過ごしたり、車いすを利用した
そんな高齢者に話しかけるときは、体勢を下げて本人と目
立ったままで上から話しかけられても、どこか見下されて
例えばガソリンスタンドでも、失礼のないようドライバー
目線の高さを合わせることは、気持ちよくコミュニケーシ
『否定しない、叱らないが大原則!』
認知症が進み、記憶力が低下しても、羞恥心やプライドは
その点をよく理解した上で本人に話しかける必要がありま
例えば、認知症の方がすでに成人になった息子に対して、
否定して本人が間違いを認知できるうちはいいですが、同
こういった状態で「小学校なんて何十年も前に卒業したよ
また、本人がとった行動に対しても、否定せずに受け入れ
例えば、洋服を便器の中に詰め込もうとしていた高齢者が
こういった行為を発見したとき、家族は「汚いじゃないの
これによって本人は疎外感を感じることなく、家族の一員
ただし、安全上問題がある場合、むやみに褒めたり肯定し
例えばコンロの火を点けたまま忘れてしまう、横断歩道の
こういう行動が見られる場合は別途対策を考える必要があ
『アイコンタクトやスキンシップが持つ可能性』
認知症の症状の特徴として、比較的新しい記憶から失われ
逆に言い換えれば、幼少期の記憶は失われていない可能性
この特徴を活かした「回想法」という手法が認知症患者に
具体的には、子どものころによく遊んだもの、歌、写真な
話が盛り上がってくれば、家族間でのコミュニケーション
また、言葉だけに頼らない非言語コミュニケーションで認
1963年にアメリカ人ソーシャルワーカーのナオミ・フ
集団の中で“自分”という存在を再認識してもらい心の安
言葉以外にも、認知症の緩和につながるプロセスはまだま
『認知症への正しい理解が、正しいコミュニケーションを
「認知症の人は、常に不安を抱えて暮らしている」という
認知症改善のためにさまざまな療法が確立されつつありま
今回ご紹介したようなコミュニケーションの手法を取り入
『心、身体、一人で悩まず』
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助けになれるかもしれません。
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